済州四・三 76周年大阪慰霊祭

約3万人が亡くなったと言われる済州4・3事件。済州出身者が多く住む大阪では、毎年犠牲者慰霊祭を開催しています。

4・3犠牲者の補償基準発表

韓国の行政安全部は2021年10月27日「済州4・3犠牲者補償基準制度化方案」を発表しました。遺族会は、改正4・3特別法(2021年2月国会通過)にもとづき実施された「過去事賠・補償基準制度化に関する研究業務」の結果を受け入れるとしており、遺族会の同意を得た方案です。朝鮮戦争前後の民間人集団犠牲事件に対する初の立法的補償となります。

今回の方案では、死亡・行方不明者の補償額は1人当たり9000万ウォンの均分支給とし、後遺障害・受刑者は、障害の程度や労働力喪失率、受刑・拘禁日数などを考慮して、9000万ウォン以下で委員会が決定する金額となっています。(ただし、犠牲者への均分支給には反対の意見もあります。)

この金額は、医療支援金、犠牲者逸失利益に、精神的損害に対する慰謝料を加えたものです。方案では、改正4・3特別法第16条における「犠牲者に対する慰謝料など特別な支援」の性格を「補償」と解釈しました。

行安部は、個別訴訟で補償を受けたり、遺族がいなかったり、国家有功者として補償を受けた人を除いた10,101人を補償対象とする方針で、全体の補償額は計算上、990億9千万ウォンとなります。これは、韓国政府による過去事関連事件への賠・補償額としては最高となります。支給は5年間で段階的に実施する予定で、2022年度から政府予算案に計上し、補完立法も積極的に推進していくとされています。

なお行安部はグループインタビュー、個別面談、懇談会など16回にわたって遺族の意見を集約したということですが、日本でのヒアリングは実施されなかった模様です。

ここでは、行安部が作成した報道資料の日本語訳と、新聞報道へのリンクを紹介します。

報道資料:済州4・3犠牲者補償実施、過去事問題完結のための一歩―補償基準作成研究業務の終了、迅速な制度化のための「済州4・3事件法」改正―(行政安全部2021/10/28朝刊)

□ 行政安全部(長官チョン・ヘチョル)は済州4・3犠牲者補償基準制度化方案を取りまとめ、来年度の補償実施のために、迅速な補完立法を支援すると明らかにした。

  • さる2月に国会を通過した「4・3事件法」(2021.6.24.施行)全面改正の趣旨にしたがって、行政安全部は「犠牲者に対する慰謝料などの特別な支援」方案講究のための研究業務を遂行し、具体的な補償基準を提示した。
  • 今回の済州4・3犠牲者補償実施は韓国戦争前後の民間人集団犠牲事件に対する初の立法的補償として過去事整理の大きな転機を迎えるだろうと予想される。

□ 行政安全部は経済人文社会研究会の協同研究課題として「過去事賠・補償基準制度化に関する研究(4・3事件法を中心に)をさる2月から10月までの約8カ月間遂行し、その結果をもとに済州4・3犠牲者補償の素案を完成した。

  • 韓国法制研究院主管、韓国刑事・法務政策研究院の協力により構成された今回の研究では、△「4・3事件法」第16条の「犠牲者に対する慰謝料等」の法的性格を明らかにし、△犠牲者補償基準、△請求権者範囲、△補償手続に関する事項、△家族関係の訂正などを集中的に検討した。
  • 今回の研究結果は、会議開催および書面等を通じた専門家諮問を14回経て、グループインタビュー・個別面談・懇談会など16回余りにわたる遺族意見収集に基づいて作成した内容という点で、いっそう意味がある。

□ 研究結果を参考に行政安全部が準備した「4・3犠牲者被害補償基準制度化方策」は次の通りである。

  • 第一に、法第16条の「犠牲者に対する慰謝料等特別な支援」の性格を「補償」と見た。
    -済州4・3事件の犠牲に賠償事案と補償事案が混在していることを勘案し、類似立法例(5・18補償法、民主化補償法、釜馬抗争補償法など)を参考にして、適法行為だけでなく、違法行為による損害填補まで含めることが可能な「補償金」と新たに定義した。
  • 第二に、4・3事件犠牲者に対し積極的損害(現・医療支援金)、消極損害(逸失利益)、精神的損害(慰謝料)をすべて填補して完全な補償をし、一人当たりの補償金を「均分支給」することにした。
    -研究陣は、消極損害の填補に関連し、4・3事件の発生時期と近接した1954年の平均賃金を現在価値(市価基準の物価上昇率を反映)に換算して、犠牲者一人当たりの逸失利益の平均値を推計し、精神的損害填補のための慰謝料を基準に、国家賠償法上の死亡者本人基準の慰謝料を提示した。
    -このような研究結果を参考に、犠牲者へ補償金を均分支給するが、死亡・行方不明犠牲者一人当たりの補償水準を9千万ウォンとし、後遺障害*・受刑者**犠牲者の場合、9千万ウォン以下の範囲内で委員会が決定した金額を支払うことにした。
    * 障害の程度および労働力喪失率を考慮 ** 受刑または拘禁日数などを考慮
    -均分支給方案は、4・3事件が70年以上過ぎた事件であることを勘案する時、△所得証憑が困難、△賃金統計の正確性が不十分、△差等支給による共同体葛藤の憂慮、△集団犠牲補償による共同体回復という立法趣旨を考慮し、△犠牲者および遺族の意見を尊重した結果である。
  • 第三に、申請者が犠牲者補償金の支給決定に同意する場合、「民法」上における裁判上の和解が成立したものと見なす条項を置き、4・3事件による被害補償の最終的解決を図った。
    -犠牲者補償の範囲に積極的損害、消極的損害の填補だけでなく、精神的損害に対する補償を含め、「民主化補償法」「5・18補償法」上の「裁判上の和解と見なす」という条文に対する憲法裁判所の違憲決定趣旨を反映した。
  • 第四に、犠牲者が死亡したり行方不明になった場合、補償請求権者は補償決定当時の「民法」を準用し、相続できるように特例を置いた。
    四・三事件の発生時期(1947年~1954年)を考慮すると、1960年以前に死亡または行方不明になった犠牲者がほとんどであり、民法第997条(相続は死亡時点により開始)にしたがって、旧民法(戸主相続)による相続が行われることになる。
    -遺族は、戸主相続が現実化すれば、むしろ共同体に大きな混乱をもたらすだろうと懸念した。このような遺族の意見を積極的に反映し、研究陣は補償決定当時の「民法」上の財産相続人に相続できるように特例を置く方案を提示した。
    -また、犠牲者の祭祀を行ったり墓を管理して、遺族*として認定された4親等が長期間の補償遅延により死亡した場合、これを受け継いだ直系卑属(5親等)が例外的に補償請求権を持つことにし、相続範囲を5親等にまで拡大して欲しいという遺族の要求を一部解決した。
    * (法第2条第3号) ①配偶者、②直系尊・卑属、③兄弟・姉妹、④祭祀奉行・墓を管理する4親等以内の傍系血族(優先順位に該当する遺族がいない場合、次の順位の遺族登録が可能)
  • 第五に、この法による補償が犠牲者の刑事補償請求を妨げないことを明示し、刑事補償請求権も、4・3犠牲者補償請求権と同様に、現行の「民法」を適用するよう特例を置き、混乱の余地を減らした。
    -また「国家賠償法」「刑事補償法」など他法による賠・補償を受けたり、支援または礼遇を受けた者に対しては、補償金を差し引き支給したり、適用を排除することができることを明示し、同じ原因(4・3事件)による被害補償間の公平性を考慮した。
  • 第六に、補償業務の専門的・効率的処理のために委員会に補償審議分科委員会を設置し、補償金を一括支給するが、生存犠牲者・犠牲者決定日などを考慮して申請順序を調整できるようにした。
    -申請期間について、遺族は家族関係の訂正に要する時間を考慮して、3~5年と余裕を持って設定することを希望した。 このような意見を反映し、申請期間を弾力的に運営するために、法律ではなく施行令として定め、その期間は3年と検討した。
  • 最後に、犠牲者の死亡・行方不明以後に申告された婚姻関係の効力を認定するための婚姻申告等の特例を設けることにした。
    -犠牲者の決定過程で死亡または行方不明日が確認され、公簿上、死亡日が婚姻申告以前に訂正される場合、現行制度によっては既存の婚姻届が無効になり、子女との親子関係も抹消されうる。
    -これにより、既往の家族関係の効力を維持させる必要性が提示され、特例を置いてその救済策を整えたのである。

□ 行政安全部は研究業務結果を参考に、5年間の段階的な支給計画にしたがって、2022年の政府予算案に1,810億ウォンを反映し、滞りない執行のために必要不可欠な補償基準の制度化のため、補完立法を積極的に支援する計画である。

  • 来年度の補償執行に拍車をかけるため、具体的な補償基準が盛り込まれた「4・3事件法」追加改正は、議員発議の形式で迅速に推進される予定である。

□ チョン・ヘチョル行政安全部長官は「済州4・3犠牲者への補償で遅ればせながら、罪なき犠牲に対する国家の責任を果たし、過去事問題解決の転換点を提示することになり、その意味は格別である」としつつ、

  • 「残る立法過程で国会ともよく協力し、来年度の補償が滞りなく執行されるようにする」と述べた。

済州4・3事件犠牲者の補償基準が設けられた…政府「2022年から段階的支給」(京郷新聞2021/10/27)

日本語要約(FB)

済州4・3事件被害者補償金総9千億ウォン…過去事事件最大(聯合ニュース2021/10/27)

日本語要約(FB)

4・3犠牲者賠・補償金一人当たり8960万ウォン支給……遺族会「受容」へ筋道(ヘッドライン済州2021/10/08)

 

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